リモートワーク環境では普通のネットワーク接続はNG?
VPNによる安全な接続とは?
リモートワーク環境の構築について分かりやすく解説
近年では、感染症対策や働き方改革、クラウドサービスの拡大などを背景に、リモートワーク(テレワーク)がより広く推奨されるようになっています。本記事では、リモートワークを行う上で重要となるVPNやリモートデスクトップの設定について、分かりやすくご紹介します。
目次
そもそもVPNとは何か?
VPN(Virtual Private Network:仮想専用線) とは、インターネットなどの公衆ネットワークを利用しながら、あたかも専用のプライベート回線を使っているかのように、安全にデータ通信を行う仕組みです。
VPNの特徴
暗号化:
- 通信データを暗号化し、盗聴や改ざんを防止。
- 公衆Wi-Fiでも安全に利用可能。
認証:
- ユーザーやデバイスを認証し、不正アクセスを防ぐ。
- パスワード、証明書、多要素認証などを利用。
トンネリング:
- インターネット上に「仮想的な専用回線」を作り、その中でデータを送受信する。
リモートワークにおいて社内LANと同等のセキュリティレベルを保つためには、VPNを利用して安全な仮想専用回線を確立することが不可欠です。
リモートデスクトップとは? VPNとは違うの?
リモートデスクトップとは、遠隔地にあるPCを手元の端末から安全に操作できる仕組みです。
リモートデスクトップの特徴
遠隔操作:
- アプリやファイル、デスクトップ環境をそのまま利用可能。
データはリモート側に保持:
- 基本的に操作しているPC側にはデータが残らず、安全に利用できる。
利便性:
- 自宅から会社のPCに接続して業務を継続可能。
- 出張先からオフィスの環境を利用できる。
リモートデスクトップとVPNの違い
リモートデスクトップは「遠隔操作を行う仕組み」、VPNは「安全な通信経路を確保する手段」という点で異なります。実際のリモートワークでは、まずVPNで会社のネットワークに安全に接続し、その後リモートデスクトップを利用して会社のPCを操作する、といった形で併用されています。
違いのまとめ(比較表)
項目 | VPN | リモートデスクトップ |
---|---|---|
主な役割 | 社内ネットワークへ安全に接続 | 社内PCを遠隔操作 |
利用環境 | 接続後、自分のPCで業務アプリを利用 | 接続後、会社PCの環境をそのまま利用 |
データの保存先 | 自分のPCに保存される可能性あり | 会社PCに残り、自分のPCには残らない |
必要条件 | VPNサーバー、認証情報 | 会社PCが稼働していること |
セキュリティ | 通信の暗号化がメイン | データを持ち出さず利用できる |
リモートワーク環境におけるVPNやリモートデスクトップの設定
リモートワーク環境でのVPNやリモートデスクトップの設定は、セキュリティと利便性の両立が重要です。以下に整理します。
VPNの基本的な設定手順
VPNは安全な通信経路を確立するための仕組みです。
リモートワークでは、遠方からでも安全に社内ネットワークに接続する役割を持ちます。
1.企業側でVPNサーバーの準備
- 社内にVPNサーバー(例: OpenVPN, L2TP/IPsec, IKEv2, WireGuard)を構築。
- ファイアウォールやルーターで必要なポートを開放。
- ユーザー認証方式(ID/パスワード、証明書、多要素認証)を設定。
2.クライアント側(リモートワークを行う社員側)での設定
- 各端末のOSに標準で搭載されているVPNクライアントを利用、または専用アプリをインストール。
- 接続先サーバーのアドレス、認証情報、暗号化方式を設定。
- 必要に応じて常時VPN接続(Always On VPN)やスプリットトンネリング(※)の有無を検討。
※スプリットトンネリング:必要に応じて、一部の通信をVPNを使わずに行うようにする設定。
3.セキュリティ強化
- 多要素認証(MFA)を必ず導入。
- VPNサーバーにアクセス制御リスト(ACL)やIP制限を設定。
- 定期的に証明書やパスワードを更新。
リモートデスクトップの設定
VPNで社内に安全な通信経路を確立後、リモートデスクトップで社内PCにアクセスするケースが一般的です。
ここでは例として、Windowsに標準搭載されているリモートデスクトップ機能(RDP)で解説します。
1.社内PCでの設定
- 「リモートデスクトップを有効にする」を設定。
- ファイアウォールでRDP用のポート(TCP 3389)の通信を許可。
- 管理者以外の利用者を「リモートデスクトップユーザー」に追加。
2.クライアント側設定
- 「リモートデスクトップ接続」アプリで社内PCのIPアドレスまたはホスト名を指定。
- VPNによる接続を確認後、認証情報を送信しログイン。
3.セキュリティ対策
- RDPポートをインターネットに直接公開しない(必ずVPN経由にする)。
- ネットワークレベル認証(NLA)を有効化。
- アカウントに強力なパスワードとMFAを導入。
VPNやリモートデスクトップの運用において、特に重視すべきこと
- ゼロトラストの考え方:VPNだけでなく、デバイス認証・ユーザー認証を組み合わせる
- ログ監査:VPNログ・RDP接続ログを必ず保存・監視
- 端末のセキュリティ:ウイルス対策ソフト、OSアップデート、ディスク暗号化(BitLocker/FileVault)
- 帯域対策:リモートデスクトップの画質・転送設定を調整し、回線負荷を軽減
リモートワークを実施する際には、VPNを使った「安全な社内ネットワークへのアクセス環境」と、リモートデスクトップによる「社内PC環境の遠隔利用」の双方を組み合わせ、加えてMFA(多要素認証)や通信の暗号化、ログ監視を徹底することが求められます。
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